「好きだったのよ あなた 胸の奥でずっと
もうすぐ わたし きっと あなたをふりむかせる」
風呂で娘の身体を洗いながら、口ずさんだ。
娘はこっちを見ながらにこにこしている。
「青春のリグレット」に少しハマってから、ドライブでユーミンをかけた。
『日本の恋と、ユーミンと。』のアルバムである。
その夜、風呂で口をついて出たのが「まちぶせ」のフレーズだった。
でもこの曲、先述のアルバムには入っていないのである。
ユーミンの曲には違いないし、恋の曲なのだが。
私の思い描いたメロディは、ユーミンではなく石川ひとみの歌っているものだった。
ユーミンが歌うと、やっぱり、後ろ髪を引かれすぎて、したたかすぎる。
「まちぶせ」というと、三木聖子がよく引き合いに出され、こちらも良いね、と言われるのもわかる。
しかし、三木聖子がわるいのではなく、石川ひとみが良すぎたのだと思う。
石川ひとみのは、女のしたたかさを表に出しすぎない感じ。
それが、私にとってはちょうどいい。
そのくせ、「まちぶせ」のジャケットはどうだろう。
したたかさ全開ではないか。
「もうすぐ」「きっと」じゃなくて「今すぐ」「絶対に」ものにするワ、といった強さを感じる。
この曲のリリース当時の石川ひとみは「プリンプリン物語」のプリンセス・プリンプリンのイメージが強かったんじゃないかと思う。
私が石川ひとみをはじめて知ったのも、「プリンプリン物語」の再放送だった。
教育テレビによくマッチしたひとみおねえさんの「まちぶせ」の側面は、印象的だ。
したたかな歌詞を、にこやかにのびやかに歌い上げる。
「まちぶせ」ってワードも、すごいな。
肉食動物が獲物を捕らえるための知恵のことでしょ、とひとりで感嘆していると、
娘が私の顔を見てにこにこしていた。
我に返り、ああ、おふろあがろっか、と、私を待っていた娘を抱えて、風呂を出た。
石川ひとみ「まちぶせ」(1981年)
第2弾、執筆お疲れ様です!
確かにプリンプリン物語での「おねえさん」な石川ひとみと対照的で、まちぶせでは「恋に強気な女性」なんですよね〜
しかもその2つがほぼ同じ時期というのも驚きです…
あと挿絵もご自身で描かれているそうで、すごいですね!
こちらも楽しみの1つです
(プリンセス・プリンプリンが「まちぶせ」状態になってるのを見て笑ってしまいました)