楽曲紹介_びんぼう

こんにちは、貧乏です。なぜ、私は貧乏なんだろう。思い当たる原因がひとつあります。

 間を埋めようとして、ものを買う癖があるからです。口が寂しいからガムを買ったり、電車内で暇を潰すためにキオスクでプレイボーイを買ったり、飲みかけのペットボトルをポケットにねじ込んでるのに新しいものを買ったり、、、なんといっても一番はタバコです。なんかのキャッチコピーで、「タバコは生活の句読点」というものを見たことがあります。我々がタバコを吸う理由を、これ以上ない確度で表現していると思います。何か次の行動を起こす前にいったん、タバコを吸うのです。次に待ち構えているイベントが、意中のあの子とデートだろうが、溜まりまくった住民税の払い込みだろうが、タバコを吸うのです。いったん、吸うのです。区切りをつけるのです。

 私が吸っているマルボロのアイスブラストは執筆時点で600円。一日に一箱吸うので、月に18000円。そういう近視眼的な金の使い方を続けた結果、時間にも金にもルーズな体たらくを生み出すのです。間を埋めようと試みた結果、間抜けになっているなんて皮肉なもんです。それっぽい理由をつけたところで、結局は身銭をタバコの煙に変えているだけです。「貧乏暇なし」という諺がありますが、貧乏な暇人になるのはそんなに難しいことではありません。

 間を埋めようとするくせに、土日に予定を作るのが苦手、という厄介な性格の持ち主でもあります。映画のチケットを買ったり、レコードショップで物色したり、友達と飲みに行く約束をしたり。間が空きすぎて蜂の巣になっている私の生活を満たしてくれる楽しみなんて、街に出ればいくらでもあります。でも、いやなんです。大学時代からずっとそうです。

 なんか、休日を無理やりにでも有意義にしようとする態度が、私は苦手なんです。美術館巡り、ボルダリング、都会に毛が生えた郊外でやるキャンプ、早朝の代々木公園で行われる謎のスポーツ、、、

 自分がそうしたくないだけ、と言う話ではなく、昔は他人がそうしているのを見るだけで虫唾が走りました。無理やりにでも私生活を充実させたいという強迫観念、「有意義病」と名前をつけて心の中で見下していました。有意義病を罹患した人にみられる、典型的な症状があります。月曜日に「先週末はなにをしたの?」と挨拶がてら質問してくるのです。別に、家で屁をこきながらタバコ吸ってるうちにサザエさんが始まってたけど、なんか文句あるの。そう思いながら「えっとねー、家で映画を見てたよ!」と答えます。もう遥か昔に見た映画を適当に見繕って、簡単な感想を答えて会話をクローズさせます。休日の過ごし方で、人間としての面白さを値踏みされているようで苦手でした。僕が勝手に卑屈になっているだけですが…。

 露悪的になりましたが、今ではそういう感覚が薄れてきました。私が病気なのは単に、今まで会ってきた人達が送る有意義な私生活が、自分の考えるものとギャップがあっただけなんじゃないか。昭和ポップス倶楽部のSlackスペースルームには、「ひとりごとの部屋」というチャンネルがあります。ここでメンバーの皆さんが書いている休日の過ごし方は、全て魅力的に見えます。浅草演芸ホールで落語を鑑賞したきた話、スリッキーNを買った話、氷川きよしと宇多田ヒカルが見分けつかなくなった話。どれも掛け値なしに「有意義だな〜」と思えます。そも自分が考える有意義だけが本当の有意義だなんて、おこがましい思想だよな、と反省しています。精神まで貧乏になるわけにはいけません。

 そんなことを考えながらタバコに火をつけます。精神的に少し成長しても相変わらず、間を埋める癖は直りません。タバコをスパスパ、この三連休はスカスカです。

今日ご紹介する昭和ポップスは大瀧詠一「びんぼう」です。
この曲について話すことは特にありません。

本名:片野直人
趣味:昭和歌謡、野球、社会科学

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