楽曲紹介_スタンダード・ナンバー

 皆さんは、薬師丸ひろ子の代表曲「メイン・テーマ」が、南佳孝の「スタンダード・ナンバー」という曲のカバーであることを知ってましたか。

 最近、上記の曲を初めて聴きました。めっちゃかっこいいですよね。倶楽部メンバーのコウキシャウト3が仰ってくださったのですが(いつも音楽、映画のおすすめありがとうございます)、歌詞がキザなところがいいんですよね。

 例えば「泣くなんて馬鹿だな」ってところ。ちょっと斜に構えた感じ。歌詞に出ずとも、歌い方だけで肩をすくめていることが伝わるくらい。インターネットに蔓延る冷笑人間とは似ても似つかない、クールなニヒルさを感じることができます。それに、並の男はここまでカッコよく人を馬鹿呼ばわりできないと思うんです。私みたいなドサンピンがうかつに「馬鹿だな」なんて言おうものなら、張り手、ひとつ、もらうだけ〜♪(河島英五)

 もひとつ。「本気になりそうな俺なのさ」です。学校で席がとなりになるだけでその人を好きになってしまうくらい女性に耐性が無い私にとって、「本気になりそうな俺」を押し留めるなんて余裕のある事はできません。それに、語尾が「なのさ」なんて、現代で使う人は稀有ですよね。フワちゃんくらいしか思いつきません。

 でも私、思うんです。こういう、宍戸錠くらいしか似合わないようなキザなセリフは、我々もどんどん日常生活で使っていくべきだと。倶楽部の是とするところのひとつに、昭和の音楽を次の世代へ継承したい、というものがあります。個人的には、こういう言葉遣いのひとつひとつも継承していきたいな、と思っています。

 閑話休題。田舎の理髪店に高確率で置いてあることでお馴染み、「課長島耕作」について語らせてください。この漫画、とりわけ初期に顕著なんですが、おしゃれな言葉遣いが頻出します。

 例えば「千三つ屋」です。「言葉を千、言うのなら、そのうち当てになるのは三つだけ」といったところで、要は嘘つきって意味です。こういった、令和において簡単に出会えないような美しい日本語を、私は少しずつ使っていきたいのです。ちなみに作中では、島が素性を隠して不倫していたつもりが、相手が妻の旧友だったために嘘が全てバレてしまった、といった状況で使われていました。彼は本当にどうしようもないです。

 このまま話題を、南佳孝から島耕作へとモンロー・ウォークでシフトしていきます。

 島はジャズ好きであることがわかる描写がよく見られます。各話のサブタイトルもスタンダード・ナンバーの曲名を引用するケースが多いので、おそらく作者、弘兼憲史の趣味なんだろうなと推測しています。例えば「Speak Low」です。The Four Freshmenのバージョンが私は大好きです。生意気ですが、高校時代は勉強用のBGMにしていました。ちなみにこの曲名を題した第42、43話は名作回なので、シマコーにご興味のある方はぜひ読んでいただきたいです。

 キザになるためには、これもいいですよね。会話の中で、さりげなく曲名や歌詞のワンフレーズを引用してみたい。やりすぎると鼻につくのでバランスが重要な作業だと思いますが、ちょっと憧れます。

 さて、願望ばかりでは何も始まりません。憧れるのをやめましょう。いざ実践。この企てには、シチュエーションに対して最適な曲名を選択することが大切です。例えば…。

 ここは、馴染みのバー。店内には、グラスを傾けながらぼんやりと考え事をしている女性がひとり。その瞳の奥は、薄く煙がかかっているようです。すべてを映すはずの鏡が、何か秘密を隠すように曇っているからでしょうか(この一文はAIに書かせました)。

 手元には、およそ若い女性が持ち歩く事は珍しい、銀のネクタイピンが置いてあります。一回り年上の男性が、きっと身につけていたであろうと思わせるような、そんな余韻を感じさせます。

 人には、それぞれ事情がある。決して深入りしてはなりません。たとえ、その人が生きてきた時代と、その人がもつアイテムのアンバランスさが、私の心を惹き寄せる何かだとしても。

「ふふ。君はまるで、コンピューターおばあちゃんだね。」

 本日ご紹介する昭和ポップスは南佳孝「スタンダード・ナンバー」ではなく、酒井司優子「コンピューターおばあちゃん」です。
この曲について話すことは特にありません。

代表のかなえ氏から授かりました、カタ坊という名前で参加しております
死ぬ前に、ことわざひとつ、生み出したいです

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