こんにちは!歌抜き伴奏のみの音源、いわゆるオリジナル・カラオケに沼りすぎていて、昭和ポップスだけでなく、とうとう平成・令和の音源にも手を出している最近この頃です。
編曲や楽曲構成について、基本情報、秘話もまじえながらさっそく、考察していきたいと思います。いっぱいあって、何を取り上げようか迷ってますが、1曲1記事にして投稿していきます。
それではまず筒美京平先生の代表作、言わずもがな超有名曲いしだあゆみさんの「ブルー・ライト・ヨコハマ」を取り上げます!
基本情報
まずはいしだあゆみさんの歌ありで聞いてみてください。
大々的に売れるのも頷けるほどの歌詞、サウンドともにインパクトがとても強い!そして、後世にも横浜のご当地ソングとして長く広く名を轟かせます。
歌詞的に漢字ではなくカタカナで「ヨコハマ」と書いたあたり、橋本淳さんのすごくセンスを感じました。
僕が入会して初めて参加した交流会のプレゼンでまみこさんが「ヨコハマ」がカタカナの理由について、こうおっしゃってました。めちゃくちゃ納得しました。加えて、「ヨコハマ」をカタカナにすると不作になるジンクスを見事に破った曲でもあるということ。

脱線しますが、還暦を過ぎた地元の飲み友達がいしだあゆみさんの話になるたびに「あんなお人形さんみたいな歌手前にも後にも見たことない」と豪語していますが、確かに少し納得できる節もあるんです。
と言う話はさておき、いしだあゆみさんの26枚目シングルはオリコン週間1位、69年度年間3位を獲得しました。じわじわ売れる形でダブルミリオンを記録、第11回日本レコード大賞 作曲賞と第2回日本有線大賞 努力賞も受賞されました。
作詞:橋本 淳/作・編曲:筒美 京平
発売:1968(昭和43)年12月25日
演奏:コロムビア・オーケストラ
制作秘話
実は「ブルー・ライト・カワサキ」になる予定だった?!
この曲が作られたのは1968年秋ごろのことでした。1967年にいしださんが所属していたレコード会社・日本コロムビアから「1年間、3作作ってほしい。そのうち1作は100万超を目指して」と依頼されました。6月に出した「太陽は泣いている」はそこそこヒットしましたが、次の「ふたりだけの城」は「京平くんが“ボサノバがはやっているから”と作ったが、500枚しか売れなかった」と大失敗。勝負作の3作目のレコーディング前日、「麻雀友達が住んでいた横浜に遊びに行って海を眺めていた」といいます。
当時の横浜の海には灯りがなく真っ暗でした。遠くに川崎の工業地帯の灯りが青く光っていたので、そんな詞を書きました。フランス・カンヌの夜景に重ね合わせたとのことです。公衆電話に10円玉を積んで、スタジオにいる京平くんに電話して伝えたら“ブルー・ライト・カワサキよりもヨコハマの方が良くないですか?”と言われて変えた逸話があります。
翌日がレコーディングでもう時間がないので、横浜から筒美京平に電話をかけて、タイトルだけ決めたと伝えました。
筒美氏はメロディーを考えていたそうで「ポール・モーリアのアルバムにイントロ・イメージが合うものがある」と言いましたを
橋本氏はもう一度、海岸通りを歩き回わり、歩いても、歩いても、何も思いつきませんでした。「あれ?歩いても、歩いても。これをサビにしようか・・・」と即興でワンコーラス作ります。1番の歌詞を電話で筒美に伝え、橋本は帰宅して残りの歌詞を徹夜で仕上げました。
厳しい歌唱指導と長丁場に渡る苦悩のレコーディング
レコーディングにおよそ48時間弱もかかったというから驚きですね。筒美先生は大人しくそこまで口出しする方でもないため、他の方に散々言われたんだとは思いますが、たとえば歌い始めの「街の灯りが」がなかなかうまくいかなかったそうです。
当然、そのメロディーも筒美京平先生が考えられた訳ですが、1分43秒からはじまる間奏のメロディーなんです。
しかし、いしだあゆみさんは何度歌っても
今、我々が知っているメロディーに
なってしまったといいます。
その時、筒美京平先生は
『いいんだよ。それがキミの歌いやすいメロディーなんだから。それでいこう』とOKを出したのです。
と、たくさん秘話があるので、興味がおありでしたら、是非調べてみてくださいね!
構成・進行
お待たせしました。この曲のサウンド構成・楽曲進行を書いていきます。ぜひ下記楽器分布をご覧いただきながら、オリジナル・カラオケをお聞きください。
左:エレキギター
中央:ドラム、鉄琴、ギター(ピック)、ブラス・セクション(トランペット、トロンボーン)
左⇔右:ストリングス
楽譜やコード等難しい言葉は抜きにして、イントロ→Aメロ→Bメロ(サビ)と2コーラス半から成るシンプルな構成です。
演歌でもよく使われる「日本人が好きな」マイナー・キーのコード進行が特徴的です。
イントロはジャーンというギターに続いて、フロアタムのドコドンドン。そしてプラス・セクションによる情緒たっぷりのメロディが2小節〜それと対話するかのようなチェンバロとギターのカウンターメロディが2小節。
最初に聴き手の心を掴み、歌に入る期待感を煽るのがイントロの役目ですね。

Aメロに入ってからも歌の「間」を埋めるように、全体的にオブリガードでフォローしています。Bメロ(うでのなーかー♪)ではストリングスで装飾しています。
この手法は、筒美先生がオックスの「スワンの涙」でも使っていたものです。
一時的転調しているところもまたミソ。このコード進行は、ドラマチックで切ない響きを生んでます。
この場合メロディは一時的にダイアトニックスケールになるが、次の箇所でナチュラル・マイナーに戻るから違和感がありません。
忘れられがちな鉄琴だが、特に間奏や歌の後半部分で際立って奏でられているからよく注目して聞いていただきたいところ。
感想
この曲を初めて聞いた時はもちろん歌ありの音源でしたが、世界観に衝撃が走りました。こんな豪華なサウンドアレンジはそうそうお耳にかかれないことだけはすぐ勘づいたのでしょう。あっぱれ筒美ワールド!
制作秘話を知ると見る目が変わると改めて思いました。売れるべくして売る努力をして来られたんだなと感じる1曲です。拙いリサーチと文章力ではどこまで伝わるかわからないですが、1音1音丁寧に作り上げて、奏でいくサウンドが「ヨコハマ」の世界観がいつまでも残りますように願っています。
次の楽曲考察もお楽しみに〜!

