先月始まった昭和ポップス倶楽部の新しい企画、その名も「今夜も生で座談会 !」略して「生ざだ」。これは月に一回程度、皆でひとつのテーマについてざっくばらんに意見を交わし合う座談会です。テーマは、きわどい?意見が分かれる?色んな意見が考えうる?賛否両論?なものをあえて設定。これに対して昭和ポップス倶楽部のメンバーはどんな考えを持っているのか、忌憚なき意見を聞かせてもらうという内容になっております。
今回は2回目の開催。テーマは「歌詞考察」です。あの名曲に対する平成生まれの「生の声」をとりあげ、メンバーの価値観を深堀りしていきたいと思います!
(自由な意見を募るために、匿名で掲載しています。司会は、さにーが務めました。)
「神田川」のは男性目線の曲か?女性目線の曲か?
かぐや姫の名曲、「神田川」。実はこの曲、歌の主人公を「男性目線」と捉えるか、「女性目線」と人によって解釈が分かれることで知られています。
あなたはどちら目線の曲だと思っていましたか?まずはその楽曲を一度聴いてみましょう!
貴方は もう忘れたかしら
赤いてぬぐい マフラーにして
二人で行った 横丁の風呂屋
一緒に出ようねって 言ったのにいつも私が 待たされた
洗い髪が 芯まで冷えて
小さな石鹸 カタカタ鳴った
貴方は私の からだを抱いて
冷たいねって 言ったのよ若かったあの頃 何も恐くなかった
南こうせつとかぐや姫 神田川 歌詞 – 歌ネット
ただ貴方のやさしさが 恐かった
では昭和ポップス倶楽部のメンバーは、この曲をどちら目線で捉えていたのでしょうか?結果はこんな感じになりました!
女性目線派:5名
男性目線派:2名
女性目線派、男性目線派、それぞれの意見
まず、多数派だった女性目線派の方から意見聞かせてください!
「忘れたかしら」「言ったのよ」などの口調から、女性目線なのかなと思っていました。あとは歌詞の表記が「貴女」ではなく「貴方」なのも、そう思った理由の一つです。
「洗い髪が芯まで冷えて」という表現から、女性の方が髪が長いことが多いし、冷え性の人も多いから、女性なのかな〜と思っていました。
「あなた」という呼び方から、自然と女性から男性への呼びかけなのかなと思っていました。男性から女性へだと「君」とかもあるけど、逆はないかなと思うし。あとはモルモットさんの言うとおり、「洗い髪が芯まで冷えて」の表現から女性目線だと思っていました。
やっぱり私も言葉の語尾から女性なのかなって思いました。でも、作詞家の方の作風とかもあるかもしれないから、そのへんは分析してみないとわからないかもしれない。
なるほど。男性目線派の方はどうですか?
私は男性目線なのかなと思いました。歌詞の中に「いつも私が待たされた」とありますが、お風呂となると男性の方が待たされているイメージのほうが強くて。
そうなんですよね。女性派の方はここに関してどうですか?
う〜ん、それはそういう人もいるのかなぁ〜〜と自然に思っちゃってましたね。
たしかに、70年代は「かしら」っていう語尾の男性がいてもおかしくもないですよね。ドラえもんとかにも出てくるし。
#細かすぎて伝わらないドラえもんの好きなシーン
— 本物(モノホン)マサえもんくん Lv.27 (@masa7819) February 22, 2017
16巻「お金なんか大きらい!」より。Fキャラあるあるの一つ、語尾に「かしら」をつける男性キャラ。更にこのコマでは、パパの吹き出しだけで「な」の字が4回使われているのが地味にツボ。 pic.twitter.com/BGTKkh2xXh
サビの「あなたのやさしさが怖かった」とは?
サビで「若かったあの頃 何も恐くなかった ただ貴方のやさしさが 恐かった」とありますが、これは二人のどういう関係を表しているんだと思いますか?
私は、過ぎ去ってしまった昔を振り返って切なくなっているのかなと思っています。「あの頃」と言ってるから、過去のことなのかなと。
僕も回想をしているのかな、と。ラブラブでうまくいっている時ほど、「この幸せな感じのまま、ずっと居られるのかな?」その関係がいつか壊れてしまうのではないか、という怖さがあったんですかね。もしくは、男性側が当時、すでに気持ちが離れかけていて、でも変わらず優しい彼女に対しての申し訳なさと、でも戻れない寂しさが「怖さ」の感情になっているのかな?
私は、今はこの二人は別れちゃってるだろうなって思います。
でも、なんかネットで調べてたら、これは喜多條忠さんの実体験を歌詞にしたと書いてあったんですよね。
こんな記事がありました。ボーカルの南こうせつさんは当時、「ただ貴方のやさしさが恐かった」というのは頂点にある恋愛が解けてしまうのを不安がる女性の心情と理解していたのだそうです。それに対して喜多條さんはは「それは違う」と答えたとか。
「彼も早稲田で学生運動をしていた。デモから下宿に帰ると、同棲していた彼女が何事もなかったかのようにカレーライスを作ってくれた。世間の騒ぎとは無縁の優しさに触れたら自分がダメになる。彼女の愛に埋没して目標が見えなくなる。それが恐ろしい。これが歌詞の真実だというんです」(南こうせつ)
「神田川」の歌詞は男目線? 南こうせつが語る(1_2)〈週刊朝日〉 _ AERA dot. (アエラドット)
これでいうと、男性目線ということになりますよね。
学生運動に馴染みのない我々世代には想像しづらい風景なのかもしれませんね。
実は私も、その記事読みました。どの記事を読んでも、彼女が台所に立っている様子のことが書いてあったんですよ。それだけ印象深い風景であれば、なんらかの料理に関する歌詞が曲中にあってもいい気がするんですが、そういう描写ってないんですよね。そういう理由もあって、喜多條さんの実体験を女性目線から書いた歌詞なのかなって思いました。女性目線のストーリーをベースに、自分自身の思いも入れた、男女どちらからの目線もある曲なのかなとも思います。
たしかにそれはあるかも。
その一方で、先程髪が長いなら女性では?っていう話もあったけれど、この時代の学生運動をしている学生であれば、髪が長い男性という可能性も十分にありますよね。
それ、思いました!たしかにこの時代だったら、髪が長いのもありえますよね。
意見を交わしていると、うさぎさんがこんな記事をシェアしてくれました。
あっ、ちょっとこんな記事を発見しましたよ!知恵袋ですけど……
20年後「貴方のやさしさが怖かった」は何と! 実は男の気持を歌ったものだと、作詞をした喜多條忠さんが発表したのでした。最後の「貴方」は女性を指すというのです。女性の気持を歌う歌は、この2行の主語が男性に転換する。ということでした。 最初から「冷たいねって 言ったのよ」までは女性の気持ちを歌い、最後の2行「若かったあの頃何も怖くなかった」と「ただ貴方のやさしさが怖かった」だけが男性の気持ちを歌っているというわけです。2番の歌詞で言えば、「悲しいかいって きいたのよ」までが女性が主語で、同じく最後の部分が男性が主語だということです。
かぐや姫の「神田川」の歌詞で分からないことがあります。 – __… – Yahoo!知恵袋
この方の話だと、先ほどカメさんが言っていた「男性と女性が入り混じった歌詞」という解釈はかなり近いかもしれませんね!
あと、さっきの音楽番組の「神田川」の映像だと、南こうせつさんがとても優しい声でソフトに歌うもんだから、なんだか女性目線の曲に聞こえちゃいましたね。だから、誰が歌うかによっても印象が大きく変わるんじゃないでしょうか。
たしかに。吉田拓郎が歌ったら、男性目線っぽい曲になったりして?
河合奈保子ちゃんが「神田川」を歌っている映像がありますよ!
何!?聴いてみましょう!!
これは間違いなく女性の歌!かなり印象が変わりますね。
あまり感情が入っていないようにも感じるかも?
奈保子ちゃんはこんな悲しい目に遭ったことないでしょうからね……(笑)
男性目線、女性目線それぞれどちらも納得できる解釈ばかりでした。「男女入り混じっている」という解釈は面白かったですね。続いて、2曲目行ってみましょう!
「いとしのエリー」はラブソングか?失恋ソングか?
サザンオールスターズの珠玉のバラード「いとしのエリー」。これをラブソングと捉えるか、失恋ソングと捉えるか、意見を交わし合いました。
泣かした事もある 冷たくしてもなお
よりそう気持ちがあればいいのさ
俺にしてみりゃ これで最後のLady
エリー My love so sweet二人がもしもさめて 目を見りゃつれなくて
人に言えず思い出だけがつのれば
言葉につまるようじゃ恋は終わりね
エリー My love so sweet笑ってもっとBaby むじゃきにOn my mind
サザンオールスターズ いとしのエリー 歌詞 – 歌ネット
映ってもっとBaby すてきにIn your sight
誘い涙の日が落ちる
エリー My love so sweet
歌詞理解の難易度が高め!「いとしのエリー」考察
ではこの曲、ラブソングだと思いますか?失恋ソングだと思いますか?
う〜ん。どっちとも言えないですね。
私もそっちよりです。
私もです!
お!?(笑)これは気になる意見が多めですね。
歌詞に深い意味ないんじゃないのかな?メロディーに歌詞を当てはめて、感情で歌ってるって感じかな。
サザン好きのニワトリさんはどうですか?
失恋よりのラブソングかな?って思ってました。気持ちが離れていきそうなところでよりを戻すみたいな。
私もそうです!
具体的にはどんなところでそう思いましたか?
「二人がもしもさめて 目を見りゃつれなくて 人に言えず思い出だけがつのれば」そして「あなたがもしもどこかの遠くへ行きうせても」という歌詞があるんですよね。これに共通するのが「もしも」という仮定の表現。これを額面通り受け取るのだとすると、まだ今のところ破綻してはいないのかなと。
いまのラブ度でいうと、どのぐらいの状態で「もしも」の話をしているんですかね?
う〜ん、かろうじてかな。。。かろうじてのところをなんとかつなぎとめている感じですかね。
どこまでをラブソングと捉えて、失恋と捉えるかによっても、これは意見が変わりそうですね。
確かに。。幸せな曲か、切ない曲かという選択肢にしたほうが適切だったかもしれませんね。それでいうと、切ない派が多いのかな?
これ、いま調べてみてたんですけど、原由子さんにプロポーズがわりに作ったって本当ですか?
おおっ!?
そう、しかも結婚式で歌ったんですよ。
そう聞くと、ラブソングなのかなぁって思っちゃいますね。背景を含めるとラブ度高めな気がします。プロポーズ&結婚式で歌ったとなるとさすがに……
エリーって誰?桑田さんの作詞はテキトー??
っていうか、エリーって誰なの?
岩本えり子さんじゃないの?桑田佳祐さんのお姉さん。
エリック・クラプトンという説もありますよね。でもお姉さんやエリック・クラプトンだったら、そもそも恋愛の歌なのか?という気もします。
桑田さんの作詞・作曲法を見ていると、意味とか考えずにテキトーに書いてるんじゃないかな?と思います。語感とか、音の方を重視して言葉を入れているようだから。
たしかに、この座談会にあたって歌詞をよく聴いてみたんですけど、「もどかしさもあなたにゃ程よくいいね」とか全然意味がわからなくて、諦めましたもん。。
そういえば1番と2番の間の間奏に、「キャハハハハ」みたいな声が入りますよね。これはなんなんでしょうか?
アレは、レコーディング中に大森隆志さんと松田弘さんが当時流行っていたインベーダーゲームのマネをしていて、それを見て笑っていた原坊の声なんですよ。
じゃあやっぱりテキトーじゃん!(笑)
「いとしのエリー」に新説が誕生!?
私これ思ったのが、「笑ってもっとBaby」ってありますよね。完全に失恋しているのに、笑ってとかっていうかなぁ?
もしかして喧嘩中とかなんじゃないですか?終わりきってはいないけど、あきらかに良い状態ではない、っていうか。
ちょっと思いついたんですけど、もうこの曲の時点で主人公が死んじゃってる説はどうですか?
死んでじゃってるからエリーに声は届かないんだけど、辛いことがあっても笑っていてね、と天国から叫ぶという。。(笑)でもつじつまは合うんじゃないですかね?
これは新しいwwwww
新説が生まれる瞬間に出会ってしまった。。。。(笑)
それで言ったら、エリーが死んじゃってる説でもアリではないですか?そう考えると、間奏部分の「ウフフフ」「キャハハハ」という声が靄がかっていて、回想シーンみたいになっているのにも納得がいくというか。(笑)
ありじゃないですか、それ!(笑)
いろんな新しい説が出てきましたね。一見ぶっ飛んだ解釈もできてしまうような、想像の余地があるっていうのもいいところですよね!
ここまでで1曲につき1時間話し、2時間が経過!さらに盛り上がるメンバーたちの中から「この曲についてぜひとも話したい」という意見が。それがこちら!
「木綿のハンカチーフ」別れたのはどっちのせい?
恋人よ ぼくは旅立つ
太田裕美 木綿のハンカチーフ 歌詞 – 歌ネット
東へと向う列車で
はなやいだ街で 君への贈りもの
探す 探すつもりだ
いいえ あなた 私は
欲しいものはないのよ
ただ都会の絵の具に
染まらないで帰って
染まらないで帰って
この「木綿のハンカチーフ」は5月の交流会で、ももちさんがプレゼンしてその歌詞の考察をした楽曲でもありますね。この曲のどんなポイントについて話したいんですか?
この曲なんですけど、あの二人が別れたのって、どっちが悪いんだと思いますか?結構、「男の子に一方的にふられて女の子がかわいそう」っていう意見をよく見たりするから、みんなは一体どう思ってるのかなぁと思って。
男の子は都会に行っちゃったんだから、状況的にしょうがないんじゃないの??
モルモットさん的には「男の子に一方的にふられて女の子がかわいそう」、という意見は違うんじゃないかと思ってる感じですか?
そうなんですよ。彼女からの回答が、全部「いいえ」から始まってるんですよね。何事も否定から入る人って嫌じゃないですか。。(笑)
「スーツの写真見てくれ」にしても何にしても、「いいえ」から始まっていて、「都会に行ったお前のことなんか受け入れる気ないからな」という拒絶を感じる。(笑)
相手が変わることを、そこまで拒否しなくてもと思うんですよね。。
(爆笑)
言われて気づきました。
時代背景とかも関係あるのかなぁ。でも筒美京平さんの楽曲だから、邪推したくないなぁ。(笑)
時代背景もあると思うよ。でも、たしかにそう考えてみると「いいえ」ばっかりはうざいね(笑)
ふと思ったんですが、この「木綿のハンカチーフ」の男女のかけ合いって、よく「手紙のやりとり」と言われますが、女の人の方の歌詞は必ずしも手紙で返信しているとは限らないんじゃないですかね?男の子からの手紙を読んで、内に溜めた思いだとも考えられますよね。
それは初めて聴いたけど、面白い解釈ですね。
たしかに、それだと「いいえ」って相手に直接言ってるのか、心で「違うんだよなぁ……」思ってるのかで、結構女の子の印象が変わりますね。
まあこの二人、どっちが悪いっていうか、結局価値観が合わなかったんですよね。身も蓋もないけど……
そうそう、別れるべくして別れたんだと思う。都会の男性が好きな女の子なら、こんなふうにならなかったかも。
うん、なんかそんな気がするなぁ。
いろいろ脱線しまくってあっちこっちに話が飛びながらも、気づけば計3時間半が経っていました。3曲だけでこれだけ語れる余地があるって、スゴイ!今回は時間切れで話せなかったものの、他にも「この曲の解釈を共有し合いたい」というテーマをたくさんもらえましたので、この生ざだ「歌詞考察編」は第2弾、第3弾とやっていこうと思います。お楽しみに!
次回もみなさんの自由な意見をお待ちしています。参加できなかった方も、ぜひコメントにて自分の解釈を教えて下さい^^「こんなテーマで話してみたい」というご意見も大歓迎です!
今更ながらのコメント失礼します。
この企画、とても面白いですね!
歌詞の考察に正解はなく、一人ひとりが感じ取ったものが答えだと思います。話すことで自分では辿り着けない解釈に出会えますし、新しい答えを見つけられそうです。私も次は参加したいです!
ちなみに、私の木綿のハンカチーフの解釈は、遠距離になると決まった時点で2人は違う方向を見ていて、3番が終わったところで別れ話をして最後にハンカチをねだる、という展開だと考えています笑
男は都会での暮らしに夢中で、女は過去の男が好きなだけで、歌の中で一度も2人の想いが交差しないのが辛いです…。
コメントありがとうございます〜!!!嬉しいです〜〜〜!
「歌詞の考察に正解はなく、一人ひとりが感じ取ったものが答え」個人的にも、本当にそう思います。色んな人の解釈を聞くのって、その人自身を知るのに近い気がして、とても興味深いなと思います。
木綿のハンカチーフの解釈、新しいものがでましたね!!ちょっと詳しく聞いてみたいです。。「過去の男が好きなだけ」だとしたら、二人で上京していたとしても、いずれ別れることになったのかもですね……。