【エッセイ’93】01_青春のリグレット

ユーミンは、あまり聴かなかった。
どこか後ろ髪を引かれるような、むずがゆさを感じるのがなんとなく苦手で、聴かなかったように思う。

NHKで「ユーミンストーリーズ」と題して、彼女の曲をモチーフにした短編ドラマを放送するらしいので、予習のつもりで聴いてみたのが「青春のリグレット」。

サブスクで選曲して、車を走らせる。イントロが心地いい。
赤信号で停まったころ、サビに入る。

なんだこの曲は。
「私を許さないで」って。
こんなの、とんでもなくエゴいじゃないか。
別れた彼氏に、自分の痕跡を残さんとばかりに、「憎んでも 覚えてて」って。
痕跡って、きっとこれは、”首筋にキスマーク”じゃない。
彼氏の”背中に爪を立てる”ような、未練がましさ。

“憎む”ってことはいやでも忘れられないわけですよ。
いい思い出じゃなくてもいいから、自分を彼の心に爪痕を残したい。

彼は、夢を大成させたのかもしれない。
だから、それに対する嫉妬心と、あきらめの悪さが半分ずつ、
それを、優しさに見せかけたエゴでコーティングしたのがこの曲だろうか。

真心って、都合のいい言葉だな。

と、打ちひしがれていたら信号はいつの間に青になっていて、
前の車が進まないから合図をした。
スマホでも見ていたんだろう。

赤信号で待つ時間で、曲に浸れるのは贅沢なのかもしれない。
たぶん次にこの曲を聴くときは、自分の思い出とも重ね合わせてしまうんじゃないかしら。

やっぱり、後ろ髪引かれるじゃないか、ユーミン。

松任谷 由実「青春のリグレット」(1985年)
アルバム『DA・DI・DA』収録

昭和ポップス倶楽部メンバー。好きなのはガンダムとチョコあ~んぱん。

3件のコメント

  1. 描写が艶やかで、ストーリーに余韻があって、吉田秋生が描くキャラクターのモノローグのようであり…魅力的なあまりPDF化しました。

    可愛くも切ないイラスト、まみこさんが描いたの??

  2. なるほど!と思いました。
    麗美に提供した曲をセルフカバーしたので、怨念というか嫉妬というか女の情念が増してしまった感があります。
    これは斉藤由貴と谷山浩子の゙関係に近いかも。

コメントを残す